
メンタルヘルスによる離職を防ぐため 企業がやるべき対策
企業における従業員のメンタルヘルスの管理は、最近ますます注目されるようになっています。 メンタルの不調を放置すると、最終的には退職や長期休職につながるリスクがあり、業務への影響は避けられません。 多くの企業ではストレスチェックやカウンセリング面談を導入し、従業員のサポートに取り組んでいますが、 すべての従業員が本音を話すわけではないのが現実で、突然の退職という事態も、実際に起こり得るのです。 最初にメンタル不調の現状について、詳しく見ていきましょう。
目次
1.日本人の30人に1人はメンタル不調
2.仕事で強いストレスを感じる人は約50%
3.職場におけるメンタル不調の原因は?
- 3-1.職場の人間関係
- 3-2.過度の仕事量や時間外労働
- 3-3.仕事の責任やプレッシャー
4.メンタル不調による離職防止を防がないと発生するリスクやデメリット
- 4-1.採用や教育へのコスト増大
- 4-2.他の従業員への負担増加とモチベーションダウン
- 4-3.企業イメージの悪化
5.メンタル不調で離職してしまう可能性が高い従業員の特徴
- 5-1.急な遅刻や休みなどの勤怠の乱れ
- 5-2.仕事のパフォーマンス低下
- 5-3.外見や行動の変化
6.離職を防止するための対策
- 6-1.職場のコミュニケーション活性
- 6-2.常にコンディションを把握する
- 6-3.セルフケア教育の実施
1.日本人の30人に1人はメンタル不調
まず、メンタル不調者はどのぐらいいるのでしょうか。厚生労働省の調査によると、精神疾患を有する総患者数は、約419.3万人です。つまり、日本人の約30人に1人が心の健康を害しているのです。
2.仕事で強いストレスを感じる人は約50%
仕事や職業生活に関することで強い不安、悩み、ストレスを感じている労働者の割合は53.3%となっています。
3.職場におけるメンタル不調の原因は?
半分以上の人が抱えている、職場でのストレス。ここから、主な原因を解説していきます。 つまり、働く半分以上の人が職場で何かしらのストレスを抱えているという調査結果が出ています。
3-1.職場の人間関係
一番の大きな原因としてあげられるのは、職場の人間関係です。例え苦手な相手がいたとしても、業務上なかなか関係を断つことはできないため 上司や同僚とのコミュニケーションに悩みを抱えている従業員は多いと言えます。厚生労働省の調査では、約25%、つまり4人に1人が対人関係でストレスを抱えているという結果が出ています。
3-2.過度の仕事量や時間外労働
業務量が多いことや、それに伴う残業もストレスの原因となっています。過度の仕事量が常態化している環境は、従業員にとってストレスの源になっていて、 厚生労働省は健康リスクが高くなる基準として、時間外労働が月100時間もしくは2~6か月の時間外労働が平均80時間以上と設定しています。
3-3.仕事の責任やプレッシャー
自分のキャパシティーをオーバーしている責任が伴ったり、ミスができない環境であったりするとプレッシャーから負荷がかかり、メンタル不調になってしまうことがあります。まわりからの期待が大きい分、自分を追い詰めてしまうケースも少なくないのではないでしょうか。
4.メンタル不調による離職防止を防がないと発生するリスクやデメリット
離職防止対策を怠ると、企業にとって、どのような影響が出てくるのでしょうか。具体的には次の3つです。
- 採用や教育へのコスト増大
- 他の従業員への負担増加とモチベーションダウン
- 企業イメージの悪化
詳細を見ていきましょう。
4-1.採用や教育へのコスト増大
従業員が退職すると、新しい従業員を採用・教育するためのコストが発生します。退職者にかけた採用や育成のコストも無駄となり、目に見えないコストがかかっています。また、スキルや知識の流出は組織の知的資本が失われることにもなります。
4-2.他の従業員への負担増加とモチベーションダウン
退職した従業員の業務は、他の従業員が担当することとなり、それは大きな負担となります。また、メンタル不調による退職は、チーム全体の雰囲気へ影響を及ぼすことにもなり、生産性へも大きく影響し、それは新たに他の従業員の退職リスクにもなり得るのです。
4-3.企業イメージの悪化
離職率が高い場合、顧客や取引先、求職者など、周囲からの評判に影響が出てきます。これは業績が下がる原因にもなりますし、イメージが下がると、更に採用活動に人が集まらなくなり、人材確保が難しくなるという負のスパイラルも発生します。

5.メンタル不調で離職してしまう可能性が高い従業員の特徴
リスクやデメリットが多い、メンタル不調による離職。続いては、そうなってしまう可能性がある従業員に見られる特徴を見ていき、リスク察知をしましょう。
5-1.急な遅刻や休みなどの勤怠の乱れ
一番多い症状として、勤怠の乱れがあります。最初は5分程度の遅刻が週1回程度、というようなものなので非常に気づきにくいですが、回数が増えたり、遅刻の時間が延びたりします。出社しようと思っても、身体が言うことを聞かないという状態であり、メンタル不調の特徴といえます。次の段階として、突然有給休暇を取得したり、無断欠勤をするなどが挙げられます。
5-2.仕事のパフォーマンス低下
メンタル不調に陥った場合、いつもできていたことができなくなるという傾向があります。これはメンタル不調によって脳の機能が低下し、判断力や思考力に影響が出ている証拠です。仕事の効率が落ちたり、ミスを起こすことで、自信喪失やモチベーション低下につながり、さらにメンタルの不調を促進させます。 急にいつもしないようなミスが増えたら、要注意といえます。
5-3.外見や行動の変化
感情が不安定になることで、大声をあげるなど怒りっぽくなったり、乱暴な態度になるというケースがあります。急に泣き出してしまうなど、感情の起伏が激しい場合も同様です。また、身だしなみが乱れるなど、外見の変化もメンタル不調のサインの可能性がありますので、注意しましょう。
6.離職を防止するための対策
メンタル不調による離職は大事な従業員を失うことになってしまいますので、防ぐ必要があります。では、どんな対策があるかを見ていきましょう。
6-1.職場のコミュニケーション活性
まずはメンタル不調を未然に防ぐ必要があります。従業員同士が良好な人間関係を築くことで、負担に感じていることを相談できる環境を整えたりお互いのメンタル不調に気づき合える空気を作ることが大切です。社内コミュニケーションを強化することは、メンタル不調対策の基本といえるでしょう。
6-2.常にコンディションを把握する
メンタルのコンディションが良くない場合、従業員自身が気づき、会社や病院に相談するのがメンタル不調を防ぐことにつながりますが本人が無自覚な場合も多いので、会社として従業員のコンディションの見える化をしましょう。ストレスチェックやエンゲージメントサーベイを使って、従業員のモチベーションを把握し、対策することがおすすめです。
6-3.セルフケア教育の実施
従業員が「ちょっとおかしいな」と気づき、セルフケアを行うことは、メンタル不調の予防につながります。ストレスに関する基礎知識や、ストレスの気づき方、セルフケアの方法など、基本的なセルフケア教育を実施することで、従業員のメンタル不調を未然に防ぎましょう。

HRカレッジの記事から、メンタルヘルスによる離職に関する情報を一冊にまとめました。 必要な時に、必要な箇所だけを読んで、すぐにご活用いただけます。