健康経営の取り組みステップ
超高齢化社会に突入した今、ただ歳を重ねるだけでなく、生活の質を高めることが重要視されています。 健康寿命を延ばすことが注目されており、特に職場での時間の過ごし方が非常に大切です。 企業においては、健康経営を推進することにより、従業員の健康を向上させ、より良い職場環境を創出することが期待されています。 どういった企業が健康経営に取り組む必要があるのか、また取り組みに必要な健康宣言についてご紹介します。 健康経営の取り組み方についても解説していきます。
目次
1.健康経営のメリット
- 1-1.生産性アップ
- 1-2.人材の流出防止と採用強化
- 1-3.医療費の削減と企業コストの軽減
2.健康経営に取り組むべき企業の特徴
- 2-1.健康経営に取り組むべき企業の特徴
- 2-2.人材不足で、従業員に過度な負担がかかっている企業
- 2-3.高齢化が進んでいる企業
- 2-4.ストレスチェックの結果が芳しくない企業
- 2-5.有給休暇取得率が低い企業
3.健康宣言とは?
4.健康宣言を行う方法
- 4-1.健康宣言事業への参加
- 4-2.社内広報や全社会議で社内に周知
- 4-3.ウェブサイトやプレスリリースを活用した社外への発信
5.健康宣言後の取り組み
- 5-1.社内の体制を整える
- 5-2.社内の健康課題を把握
- 5-3.健康課題を解決するための計画を策定し、実行する
- 5-4.成果の評価と改善
6.健康経営の施策例
- 6-1.セルフメディケーション研修
- 6-2.産業医面談
- 6-3.過重労働の削減
- 6-4.運動機会の提供
1.健康経営のメリット
健康経営は従業員の健康を貴重な経営資産と位置づけ、それを維持し向上させることを目的とした経営方針です。この取り組みによって従業員の健康レベルが高まると、次に紹介するようなメリットがもたらされ、結果として企業の業績や利益の向上が期待されます。
1-1.生産性アップ
過剰な労働からくる疲労やストレスの軽減が、従業員の集中力を向上させます。その結果、作業効率が上がり、提供するサービスや製品の品質が高まり、最終的には顧客の評価が向上することが期待されます。
1-2.人材の流出防止と採用強化
過剰な労働からくる疲労やストレスの軽減が、従業員の集中力を向上させます。その結果、作業効率が上がり、提供するサービスや製品の品質が高まり、最終的には顧客の評価が向上することが期待されます。
1-3.医療費の削減と企業コストの軽減
従業員の健康状態が向上することで、企業が支払う医療の費用が減少し、その結果として企業の負担が軽くなります。
2.健康経営に取り組むべき企業の特徴
健康経営はすべての企業にとって重要な考え方ですが、特に以下のような特徴を持つ企業が早急に取り組むべきといえます。
2-1.長期休職者が多く、離職率が高い企業
厚生労働省による「令和4年 労働安全衛生調査」によれば、メンタルヘルス対策を行っている企業の割合は63.4%であり、前年比で4.2ポイント上昇しています。
その一方で、メンタルヘルスの不調による長期休職や退職が発生した企業の割合は13.3%となっており、こちらも前年比で3.2ポイント上昇する結果となりました。
長期休職や離職が頻発する企業では、従業員が職場環境によって強いストレスを感じている可能性が高く、企業の介入が不十分である可能性があります。特に40~50代の働き盛りの世代では、仕事に起因するメンタルヘルスの悪化から自殺を選ぶ人も少なくないため、健康的な職場環境の整備が大きな課題となっています。
2-2.人材不足で、従業員に過度な負担がかかっている企業
売り手市場が続く中、人材確保に悩む企業は少なくありません。人手不足が続くと、既存の従業員が多くの業務を引き受け、一人ひとりの負担が増大します。長時間の残業や休日出勤が当たり前になることで、従業員は身体的にも精神的にも十分な休息をとる余裕がなくなります。
このような状況下で働き続ければ、業務の効率や品質が低下するだけでなく、企業に対する従業員の信頼も損なわれかねません。したがって、早急に状況の改善に取り組む必要があります。
2-3.高齢化が進んでいる
日本の少子高齢化が進む中、若年層の獲得が困難になり、企業内の年齢構成が高齢化しているという課題が増えています。従業員の年齢が上がると、会社の運営がより硬直化し、業務のスピード感が低下するリスクがあります。
さらに、病気による急な職場離脱のリスクも高まります。中高年の社員が能力を発揮するためには、企業が積極的に健康管理を推進することが不可欠です。
2-4.ストレスチェックの結果が芳しくない企業
ストレスチェックは、企業内の従業員のメンタルヘルス問題を早期に発見し、悪化を防止するために、企業で定期的に行われる検査です。高ストレスの従業員の割合が高い企業では、状況の悪化を防ぐために、積極的に健康経営に取り組む必要があります。
2-5.有給休暇取得率が低い企業
有給休暇の取得は、一定期間働いた従業員に与えられる権利です。取得率が低い企業では、従業員が「自分が休むと代わりがいない」「休暇を取ると誰かに迷惑をかけるのではないか」「有給取得が評価に響くのではないか」といった責任感や不安から、有給休暇を躊躇しているのかもしれません。
こうした風潮は、従業員の満足度やエンゲージメントの低下につながる可能性があります。早急に健康経営を導入し、従業員が有給休暇をストレスなく取得できる環境を整え、働きやすい職場を作ることが重要です。
3.健康宣言とは?
健康経営を実践することは、企業の対外的な信頼度やブランド力を高める効果があります。この効果をさらに高めるためには、健康経営を成功させている企業が認められる「健康経営優良法人」の認定を受けることが重要です。
そして、健康経営優良法人の認定を受けるための最初のステップとして、健康宣言があります。健康宣言とは、企業の経営者が公式に従業員の健康増進に取り組むことを宣言するものです。
4.健康宣言を行う方法
健康宣言を行う際には、以下のようなステップを踏んでいく必要があります。
4-1.健康宣言事業への参加
健康経営を経営方針として掲げた場合、まずは自社が加入している健康保険組合に問い合わせ、健康宣言事業の実施状況を確認します。例えば、全国健康保険協会では、健康経営を促進する企業が健康宣言を策定する支援を提供しています。
自社が加入する健康保険組合で健康宣言事業が行われていない場合は、自治体が実施している健康宣言事業にも参加できます。
従業員が居住する自治体の取り組みを調査し、積極的に参加しましょう。
4-2.社内広報や全社会議で社内に周知
各健康保険組合や自治体の健康宣言事業に参加する際には、健康づくりに関するチェックシートや応募用紙などを提出します。その後、提出した内容が審査され、健康宣言の証が送られてきます。
健康宣言の証を、会社の受付や社内の目立つ場所に掲示したり、社内広報や全社会議を通じて、従業員に周知します。
4-3.ウェブサイトやプレスリリースを活用した社外への発信
健康経営の取り組みを開始したことをは社内だけではなく、ウェブサイトやプレスリリースを通じて社外に広く知らせます。健康宣言の証を掲載することも効果的です。
取り組みを企業の経営理念の一環として明確に伝えることで、顧客や投資家からの信頼を高めることができます。
5.健康宣言後の取り組み
健康宣言を行った後は、健康経営を実践するため、以下の4つのステップが重要です。
5-1.社内の体制を整える
健康経営に取り組むことを社内外に宣言する際、同時に社内の体制を整えていくことが重要です。経営陣や管理職などのリーダー層が積極的に参加し、自らが健康経営の重要性を示します。
続いて、専門の健康経営部署や委員会を設置し、健康経営の計画や施策の立案・実施、従業員への啓発活動、結果のモニタリングなどを担当します。
人事部との連携も大切です。人事部は健康管理やメンタルヘルス支援などにおいて大きな役割を果たしますので、密接な連携を築きましょう。また、必要に応じて、外部の専門家やコンサルタントを招聘し、経営陣や従業員に対する健康経営に関する研修やアドバイスを受けることも有効です。
5-2.社内の健康課題を把握
ストレスチェックや健康診断の結果を分析し、従業員の健康状態やストレスレベルを把握します。これにより、特に改善が必要な健康課題を特定することができます。
また、有給休暇の消化率や平均残業時間、休日出勤率などのデータを分析し、従業員の労働状況やワークライフバランスの健康課題を把握します。これにより、過重労働やストレスの原因を特定し、対策を立てることができます。
ほかにも、定期的な従業員アンケートやフィードバックセッションを実施し、従業員の健康やストレスに関する意見や要望を収集しましょう。従業員の声を聞くことで、現場の健康課題を把握し、適切な施策を提供することができます。
5-3.健康課題を解決するための計画を策定し、実行する
社内における健康課題を解決するための具体的な取り組みを策定し、実行します。例えば、下記のような取り組みがあります。
①ストレス管理プログラムの導入
ストレスの原因を分析し、従業員がストレスを軽減できるようなプログラムを導入します。ストレスマネジメントのトレーニングやメンタルヘルスサポートプログラムの提供などが含まれます。
②ワークライフバランスの改善
有給休暇の取得促進や残業時間の削減など、従業員のワークライフバランスを改善するための施策を実施します。フレックスタイム制度の導入やリモートワークの推進などが含まれます。
③健康促進イベントの開催
健康診断キャンペーンや運動イベント、栄養セミナーなど、従業員の健康意識を高めるためのイベントを定期的に開催します。従業員の健康への関心を促進し、積極的な健康行動を促します。
④健康経営への取り組みを促進する制度の整備
健康経営に関する報奨金制度や評価制度の導入など、健康づくりを積極的に推進するための制度を整備します。従業員が健康経営に積極的に参加しやすい環境を整えます。
5-4.成果の評価と改善
定期的に取り組みの成果を評価し、現在の課題状況を把握します。改善が見込めない箇所や新たな課題を特定し、PDCAサイクルを回して改善を図ります。
6.健康経営の施策例
健康経営に取り組むにあたり、健康課題を改善する方法はさまざまです。取り組むことができる項目は会社の状況によって異なりますが、ここでは代表的なものをご紹介します。
6-1.セルフメディケーション研修
従業員が不調を感じた際に自主的かつ早めに対処できるよう促すトレーニングを実施します。
6-2.産業医面談
従業員が1ヵ月に80時間以上の時間外労働をし、自らストレスを自覚しているか、もしくはストレスチェックで「高ストレス」と診断された場合には、産業医面談を行い、健康的な就労を支援します。
6-3.過重労働の削減
過重労働を減らすために、従業員の状況を把握し、長時間の残業や休日出勤などを削減する取り組みを行います。
6-4.運動機会の提供
運動の機会を増やすための方法として、福利厚生を活用して社内での部活動を奨励する、全員が参加できるオンラインの運動プログラムを実施する、などが挙げられます。また、企業向けのヘルスケアアプリを導入することで、従業員が自主的に運動する機会を提供することが可能です。
HRカレッジの記事から、健康経営の取り組みステップに関する情報を一冊にまとめました。 必要な時に、必要な箇所だけを読んで、すぐにご活用いただけます。