健康経営を促進する福利厚生
人手不足や社会の価値観が多様化する現代において、企業は従業員の健康促進を経営戦略の一部として重視する「健康経営」に注目しています。 健康経営は、従業員の健康維持や向上を支援することになりますが、健康経営の取り組みを開始する際には、手軽に始められる福利厚生の導入 や充実がおすすめです。もちろん、今ある福利厚生制度の再検討や、新規に外部サービスを導入することを含みます。 ここでは、健康経営を推進するうえでキーとなる福利厚生の基本と、改善のためのポイントを紹介します。
目次
1.福利厚生とは
2.福利厚生の種類
- 2-1.法定福利厚生
- 2-2.法定外福利厚生
3.健康経営を促進する福利厚生
- 3-1.心身の健康を促進する福利厚生
- 3-2.食生活の改善・向上ができる福利厚生
- 3-3.運動不足を解消する福利厚生
4.福利厚生のサービス例
- 4-1.健康診断
- 4-2.ストレスチェック
- 4-3.カフェテリアプラン
- 4-4.ヘルスケアアプリ
1.福利厚生とは
福利厚生は、企業が従業員及びその家族へ提供する給料、ボーナス、インセンティブとは別の形での恩恵やサービスのことです。
これには、健康保険、厚生年金保険、介護保険といった法律で定められた公的な福利厚生と、企業が独自に実施する従業員向けのサービスなどが含まれます。
こうした福利厚生にかかる費用で、会計上、経費として処理可能なものを「福利厚生費」と呼びます。福利厚生費として認められるためには、下記の条件を
充たしている必要があります。
【福利厚生費の条件】
・全従業員を対象とした平等なサービスであること
・常識の範囲内の費用であること
・福利厚生の目的を逸脱していないこと
・現金支給でないこと
2.福利厚生の種類
次に、福利厚生の種類について説明します。福利厚生は、法律で義務付けられている「法定福利厚生」と企業が独自に実施する 「法定外福利厚生」の二つに分けられます。違いと、それぞれの具体例について詳しく解説していきましょう。
2-1.法定福利厚生
法定福利厚生は、法律で最低限義務づけられている福利厚生です。法定福利厚生がない場合は法律違反となります。具体的には、下記の6種類があります。
【法定福利厚生の種類】
・健康保険(企業と従業員で折半)
・介護保険(企業と従業員で折半)
・厚生年金保険(企業と従業員で折半)
・雇用保険(企業が3分の2を負担、従業員が3分の1を負担)
・労災保険(企業が全額負担)
・子ども・子育て拠出金(企業が全額負担)
2-2.法定外福利厚生
法定外福利厚生は、社員のやる気や意欲を引き出し、彼らが自身の能力を最大限に発揮できるような職場環境を提供するために企業が
自主的に実施する福利厚生です。どのような福利厚生を導入するかは企業の自由で、これらの福利厚生プログラムは多岐にわたり、企業が独自の特色を活かした実施方法で差別化を図るケースも増えています。
法定外福利厚生の選択肢には様々なものがあり、企業が直接管理できるサービスと、外部の専門サービスを活用するものに分けられます。
企業の状況を踏まえて、適切な福利厚生プログラムを選択し、導入することが必要です。
【例:自社運用できる法定外福利厚生】
・家族手当
・住宅手当
・育児休暇
・通勤手当
・資格取得手当
【外部のサービスを導入する法定外福利厚生】
・スポーツクラブとの提携、優待
・資産形成
・育児支援サービス
3.健康経営を促進する福利厚生
企業が健康経営を推進するために導入するサービスの費用を福利厚生費として計上することで、企業は税金負担を軽減することが可能です。健康経営を実施する際には、既存の福利厚生プログラムを活用したり、福利厚生費として認識される基準を満たす外部サービスを導入することを推奨します。
健康経営に有益な外部サービスを選定する際には、以下の3つのポイントを考慮し、サービス内容を検討していきましょう。
3-1.心身の健康を促進する福利厚生
心身のケアを支援する福利厚生として、健康診断は全企業で義務化されています。従業員の健康意識を高めるために、通常の健康診断に加えてがん検診などのオプションを提供したり、人間ドックを充実させるという取り組みが法定外福利としてあります。
さらに、メンタルヘルスの不調解消も極めて重要です。厚生労働省の労働安全衛生調査によれば、メンタル不調で1ヶ月以上休職している
従業員がいる事業所は全体の10.1%に上ります。メンタル不調は退職に繋がるケースもあり、カウンセラーや相談窓口の設置、ストレスチェックなどの早期発見に向けた取り組みが必要です。
3-2.食生活の改善・向上ができる福利厚生
従業員の中には、朝食を取らずに出勤する人や、ランチに高カロリーや高塩分の外食に偏っている人も多いのではないでしょうか。 食生活の乱れは健康に大きな影響を及ぼします。企業が福利厚生の一環として食生活を支援することは、従業員の健康を維持する上で非常に重要です。具体的には、社内でお弁当を提供したり、食事管理をサポートするアプリを導入することが考えられます。
3-3.運動不足を解消する福利厚生
健康な生活を送るためには、食事と同様に運動も欠かせません。運動不足が続くと生活習慣病やメンタルヘルスに悪影響を及ぼす可能性があります。従業員全員が参加できる運動プログラムを導入したり、スポーツ施設を優待するなどの取り組みを通じて、運動習慣を促進する方法が考えられます。
4.福利厚生のサービス例
次に、健康経営を実践するために導入できる法定外福利厚生の中で、「健康診断やストレスチェック」「カフェテリアプラン」「ヘルスケアアプリ」について、詳細にご紹介します。
4-1.健康診断
事業者は労働安全衛生法第44条に基づき、従業員の健康診断を実施する義務があります。同法により、労働者にも健康診断を受ける義務が課せられています。
従業員の健康診断受診率100%を達成することは、健康経営優良法人の認定や健康経営銘柄の選定において重要な評価項目となっているため、企業が健康経営を推進する際に初めに克服すべき課題と言えます。
4-2.ストレスチェック
ストレスチェックは、50名以上の従業員が常時勤務する職場で義務化されている制度です。従業員がストレスに関する質問に回答することで、自身のストレス状況を認識することを目的としています。これにより、早期にメンタルヘルスの問題を発見し、それに対する対策を講じることができます。
4-3.カフェテリアプラン
カフェテリアプランは、選択式の福利厚生制度であり、従業員のニーズに合わせた柔軟な福利厚生の提供を可能にします。福利厚生は、全従業員を対象としたものではありますが、従業員全員のニーズが満たされるとは限りません。利用できない福利厚生が多い場合、
不満が生じる可能性があります。
しかし、カフェテリアプランでは、従業員の年齢層や働き方、事業内容などを考慮して福利厚生のメニューを調整することができます。
従業員は設定されたメニューから好きなものを選択することができるため、公平性が確保されます。また、その際に、健康関連や医療分野の福利厚生を提供することで、従業員の健康意識を高めることができます。
従業員が積極的に健康関連の福利厚生を利用することで、健康促進だけでなく、従業員の満足度向上にも寄与することが期待されます。
4-4.ヘルスケアアプリ
企業が福利厚生の一環として、手軽に健康管理が行えるヘルスケアアプリを導入するケースが増えています。
会社全体でウォーキングのイベントを開催したり、毎月ランキングをつけてトップの従業員を表彰したりすることで、従業員全体のモチベーションが高まります。また、スマートフォンさえあればゲーム感覚で取り組めるため、健康に無関心な層も取り込みやすく、自然と健康習慣を定着させることができる福利厚生となります。