メンタルヘルスケアと健康経営
業界の変遷や新型コロナウイルスの影響で、従業員の精神健康に対する注目が高まっています。精神の健康不良は、心理的な問題に留まらず、身体的な健康にも悪影響を及ぼすことが知られています。そのため、企業の健康管理戦略においては、従業員の精神健康ケアが不可欠な要素となっています。 ここでは、従業員のメンタルヘルス不調の主な理由や、外部の支援プログラムを含む有効な対策や、代表的な健康支援サービスについてもご紹介します。
目次
1.メンタルヘルスの不調が起こる理由
- 1-1.個人の生活環境に関わる原因によるメンタルヘルス
- 1-2.職場の状況に関わる原因によるメンタルヘルス
- 1-3.社会的な要因によるメンタルヘルス
2.メンタルヘルスケアとは
3.企業で行うメンタルヘルスケア
- 3-1.自己ケア(セルフケア)
- 3-2.直属の上司からのサポート(ラインケア)
- 3-3.職場の保健専門家によるケア
- 3-4.職場外のリソースによるサポート
4.メンタルヘルスケアサービス
- 4-1.ストレスチェック
- 4-2.カウンセラー派遣
- 4-3.メンタルヘルスケアに関する研修を実施
1.メンタルヘルスの不調が起こる理由
メンタルヘルスとは「体」の健康ではなく、「こころ」の健康状態を意味します。メンタルヘルスの不調が起きる要因は一つではなく、個人の生活環境、職場の状況、社会的な要因など、様々な要素が複雑に絡み合って影響を及ぼします。また、誰でも、どこにいても、いつの間にか陥る可能性があります。
「個人の生活環境に関わる原因」、「職場の状況に関わる原因」、「社会的な要因」のそれぞれ具体例を見ていきましょう。
1-1.個人の生活環境に関わる原因によるメンタルヘルス
①健康問題:慢性的な身体的疾患は、メンタルヘルスに悪影響を及ぼすことがあります。
②対人関係の問題:家族や友人との関係悪化、孤独感、社会的孤立などがメンタルヘルスを損なうことがあります。
③経済的な問題:経済的な不安定さや貧困は、ストレスや不安、抑うつの原因となり得ます。
1-2.職場の状況に関わる原因によるメンタルヘルス
①職場でのストレス:職場での人間関係、業務量の多さなどが、ストレスを引き起こします。
②ワークライフバランスの崩れ:極端な長時間労働や休日出勤が常態化していると、私生活とのバランスが崩れ、メンタルヘルスが損なわれます。
③職場でのハラスメント:パワーハラスメントやセクシャルハラスメント、いじめなどは職場での重大なストレス源となります。
1-3.社会的な要因によるメンタルヘルス
①社会的な孤立:コミュニティへの帰属感の欠如や、社会的なサポートシステムの不足は、孤独感や孤立を生み出し、メンタルヘルスを損なう原因です。
②社会的な変化:経済的な不安定さ、政治的な混乱、自然災害やパンデミックなど、社会全体を揺るがす出来事は、広範囲にわたるストレスや不安を引き起こします。
③情報過多:SNSの普及による情報過多や、ネガティブなニュースの氾濫は、不安やストレスを引き起こす原因となり得ます。
このように、メンタルヘルス不調の原因は、個人の内面だけでなく、外部環境にも深く関連しています。
2.メンタルヘルスケアとは
メンタルヘルスケアは、企業が従業員が直面している精神健康上の問題に対して行う適切な支援と介入を指します。従業員のメンタルヘルスが不安定な状態にあると、モチベーションの低下や職場でのコミュニケーション問題が発生しさらには休職や退職の増加につながり、結果として企業の生産性や業績に悪影響を与えます。
特に、職場環境がメンタルヘルス不調の根源である場合、企業の外部評価にも影響し、企業ブランドにダメージを与える恐れがあります。
従業員の精神的不調を見過ごし続けることは、最終的に企業経営にも深刻な影響を及ぼすことになります。そのため、従業員のメンタルヘルスの維持と向上に積極的に取り組むことは、単に個人の健康を守るだけでなく、企業の経営リスクを低減する戦略的措置と言えます。
3.企業で行うメンタルヘルスケア
企業にとって、従業員のメンタルウェルビーイングをサポートし保護する取り組みは欠かせません。これを効果的に行うため、厚生労働省は従業員のメンタルヘルスサポートを四段階のアプローチで推進しています。
3-1.自己ケア(セルフケア)
自己管理とは、従業員が自らの不調やストレスを自覚した際に実践するメンタルケアです。企業は、従業員が自分自身のストレスを効率的に管理できるよう、健康的な生活習慣を奨励するプログラムや、ストレス管理に関するセミナー、ワークショップを定期的に提供することが求められます。
3-2.直属の上司からのサポート(ラインケア)
直属の上司が従業員のメンタルヘルスに配慮し、適切な環境整備や早期介入を通じてサポートを行うことです。これには、部下の変化に敏感であることや、必要に応じてサポートの提供が含まれます。
3-3.職場の保健専門家によるケア
職場の産業医や保健師などの専門家が行うケアです。これには、定期的な健康診断、カウンセリングの提供、職場環境の改善提案、従業員の相談対応などが含まれます。これらの専門家が人事部と連携し、必要に応じて上司のサポートにつながることもあります。
3-4.職場外のリソースによるサポート
企業外の専門機関、例えばEAP(従業員支援プログラム)や外部カウンセリングサービス、心理療法士との連携を通じたケアです。職場外の資源と企業内の保健専門家が連携することで、メンタルヘルスケアの効果をさらに高めることができます。これらのアプローチを総合的に実施することで、企業は従業員個々のニーズに合わせたメンタルヘルスケアを提供し、職場の健康と生産性の向上に寄与することができます。
4.メンタルヘルスケアサービス
健康経営の戦略として、メンタルヘルスのサポートを強化するために福利厚生プログラムにメンタルヘルスケアのオプションを組み込むことは効果的な手段の一つです。従業員の気持ちの動きを定期的に把握し、メンタルの健康問題を未然に防ぐための体制を整えることが重要です。
以下に示すような取り組みを通じて、積極的にこの目的を達成しましょう。
4-1.ストレスチェック
ストレスチェックは、従業員がストレスに関する一連の質問に回答し、その回答を収集・分析することにより、従業員が抱えるストレスのレベルを把握するための仕組みです。ストレスが原因で健康被害やトラブルが発生するリスクを低減するため、ストレスの早期発見と適切な対処が重要です。
4-2.カウンセラー派遣
ストレス度が高い従業員に対応するため、カウンセラーを派遣し、面談カウンセリングを行います。また、メンタルの不調を感じる従業員がより気軽に相談できるよう、オンラインでカウンセラーと対話できるサービスも提供しています。
4-3.メンタルヘルスケアに関する研修を実施
従業員がメンタルヘルスに関する知識やスキルを身につけることを目的とした研修を実施することも可能です。
例えば、自分自身のメンタルヘルスを理解し、セルフケアの重要性を理解したり、自己管理や心の健康を保つための方法について学ぶ「セルフケア研修」やストレスの原因や影響、ストレスへの対処方法についての理解を深めたり、具体的なストレス管理のテクニックやリラクゼーション法も学ぶ「ストレス研修」があります。